代表の稲田礼子です。
本コラムは、私が日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
睡眠負債とは、毎日の睡眠不足が積み重なることで、心身に影響を及ぼすことを指します。
睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性の30~50 歳代、女性の40~50 歳代では4割を超えている※というデータがあります。適切な睡眠時間は人により異なりますが、1日の睡眠時間は、7~8時間が理想的です。(※厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査)
睡眠負債が及ぼす影響
①パフォーマンス低下の低下
下の図は、睡眠時間と脳の反応速度の関係性を示しています。1日徹夜した人と1日6時間睡眠を2週間続けた人では、 同程度の反応速度の低下がみられます。つまり、6時間睡眠を続けていると注意力や集中力が低下し、仕事で十分なパフォーマンスが発揮できず、人為的なミスに繋がる可能性もあります。(図:ペンシルベニア大学の研究結果、Van Dongen, 2003)
②心身への影響
睡眠不足により、交感神経に働きかけるアドレナリン等のホルモンが増加し、高血圧や高血糖を引き起こします。また、 食欲に働きかけるホルモンにも影響を及ぼします。食欲を抑えるレプチンが減少し、食欲を高めるグレリンが増加することで、食欲が亢進し、肥満のリスクが高まります。精神面への影響としては、睡眠不足により、情動をつかさどる偏桃体という脳の機能が亢進し、イライラや不安感が増強するという研究結果※も出ています。 (出典:厚生労働省 eヘルスネット 睡眠と生活習慣病との深い関係)
疾患が隠れている可能性も
更年期障害や睡眠時無呼吸症候群などが原因で睡眠負債が生じている可能性もあります。不眠や日中の眠気が続く場合は、婦人科や内科等の医療機関を受診しましょう。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。