代表の稲田礼子です。
本コラムは、私が日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
暑い夜が続きますので、今回のテーマは「寝苦しい夜の快眠法」です。
睡眠と体温
人の体温は、体の表面の温度を指す皮膚温と、脳や臓器など体の内部の温度を指す深部体温に分けられます。
この深部体温の低下が、自然な眠気と質の良い睡眠を導きます。
眠りにつく30分ほど前から、体は皮膚温を上昇させ、体の熱を放出することで深部体温を下げようとします。
しかし、高温多湿の環境では、熱の放出がうまくいかず、深部体温を下げにくいことで、眠りにくくなるといわれています。
寝室の温度と「寝床内気象」
室内の温度は、快適と感じられる程度が目安です。また、心地よい眠りのためには、寝室の温度だけでなくふとんの中の温度である「寝床内気象」がポイントになります。
寝床内気象は、1年を通して温度は32〜34℃、湿度は45〜55%程度に保ちましょう。夏は高温多湿な環境や発汗などの影響で寝床内の温度も湿度も高くなりやすく、寝苦しさの原因にもなります。季節に合わせて、夏場は通気性の良い寝具を選んでください。
気温に合わせたエアコン設定を
睡眠環境学では、夏に快適に眠れる上限の室温は28℃だと言われています。それを超えるような夜にはエアコンなどの温度管理が必要です。
一方で、冷えすぎも質の良い睡眠を妨げます。
エアコンのタイマーは就寝後3~4時間の設定が適切とされていますが、熱帯夜には暑さで目が覚めることもありますので、その日の気温や湿度に合わせて調整しましょう。
寝る前の感覚で予測することは難しいため、部屋に温湿度計を置いたり、天気予報やインターネットなどの情報も活用してください。
例えば、日本気象協会のHP(tenki.jp)では、暑さによる眠りにくさを表す睡眠指数が公開されています。
睡眠指数は、和洋女子大学准教授の水野一枝先生らが、夜間に冷房を使用する目安として開発された指標です。
tenki.jpにおける睡眠指数(暖候期)のランクおよびコメント(参考2から引用)
季節に合わせた寝具や空調を上手に使って、寝苦しい夜を快適に過ごしましょう。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
参考:
- tenki.jp 睡眠指数 日本気象協会
- 水野一枝・堀江祐圭 (2021). 睡眠と健康・熱中症の関係: 夏を乗り切る快眠法. 地方公務員安全と健康フォーラム/地方公務員安全衛生推進協会 編, 31(3), 10-13.
- 暑い夏の夜を乗り切る快適な睡眠術 環境省 COOL BIZ