本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
ドラッグストアやネット通販で身近に手に入れることができるサプリメントですが、皆さん適正な使用はできていますか?サプリメントによる健康被害が問題になることもありますので、今回はサプリメントの正しい知識と付き合い方についてご紹介します。
サプリメントとは
サプリメントは、「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」と定義づけられています。サプリメントを摂取する上での重要な考え方は、医薬品とは違うということです。
私たちが口から摂取するもののうち、医薬品(医薬部外品含む)以外のものは全て食品に該当し、食品に対して医薬品のような身体の構造や機能に影響する表示をすることは、原則として認められていません。
ただし、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品については、例外的に限られた範囲で特定の保健機能や栄養機能を表示することが認められています。これらは「身体に良い効果」がうたわれるため、継続的な摂取に疑問を持たない人が多く、「食品だから安心」と過剰摂取をしている人がいるかもしれません。
サプリメント摂取のリスクも知っておきましょう
製品に複数の成分が添加されていることもサプリメントの特徴です。例えば、原材料の欄に健康に良いといわれる成分名が10~20種類も記載されている製品も少なくありません。実際に含まれている成分量は、効果が得られないような微量な場合もあります。また原材料名に「××抽出物」「〇〇エキス」などと表示されている製品もありますが、その中には有効成分以外の物質を含んでいることがあり、稀ではあると思いますが、有害な物質が混入していることがあり得るということです。
特にハーブなどの天然植物エキスの場合、原材料に含まれている成分が特定されていないことが多く、含まれる成分についても、産地や収穫時期によってかなり変動します。
さらに、医薬品とサプリメントを併用した場合、医薬品の効果が減弱したり、医薬品の副作用が増強されることもあり、飲み合わせなどにも注意が必要です。例えば、コエンザイムQ10は糖尿病治療薬や降圧剤の効果を減弱させてしまう影響があることがわかっています。
サプリメントを安全に使用するために
サプリメントを安全に利用するためには、摂取しているサプリメントの製品名、利用期間、体調変化の状況などを記録することが大事です。またおくすり手帳と一緒に「健康食品手帳」を利用することで、サプリメントと薬との飲み合わせやサプリメントを摂取した後の体調の変化について、医師・薬剤師への相談がスムーズに行えます。
健康食品手帳は行政機関等がひな形を出しているので、使いやすい物を検索するのもよいでしょう。例として消費者庁が出しているものをご紹介します。
サプリメントとの上手な付き合い方
不足しがちな栄養素を補うためにサプリメントを使用している人もいるかと思いますが、1日に必要な栄養素の摂取量というのは、必ずしも毎日摂取しなければいけないということではなく、「習慣的な摂取量(約 1 カ月の平均値)」を指しています。多く摂ったり、少なく摂ったりする日があっても構いません。
農林水産省の「食事バランスガイド」などを活用してまずは食事全体のバランスをチェックしてください。
サプリメントは、食生活をはじめとする生活習慣を改善するための一歩として使用するのが上手な付き合い方です。現在サプリメントを使用している人は、今一度ご自身の生活習慣について振り返ってみましょう。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
参考:
1.厚生労働省 日本医師会 国立健康栄養研究所「健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて」