気分の障害として、うつ病と双極性障害があります。双極性障害とは、うつ病とは異なり、うつ状態に加え、躁状態を呈する状態のことです。
躁状態のサイン
- 睡眠時間が2時間以上少なくても平気になる
- 寝なくても元気で活動を続けられる
- 人の意見に耳を貸さない
- 話し続ける
- 次々にアイデアが出てくるがそれらを組み立てて最後までやり遂げることができない
- 職場を転々としている
- 根拠のない自信に満ちあふれる
- 買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
- 初対面の人にやたらと声をかける
- 性的に奔放になる
躁状態や、そこまで状態が重度でない軽躁状態の多くの場合、本人は自分の変化を自覚できていません。トラブルを起こしたとしても、本人自身はほとんど困っておらず、いつもより調子がよいとすら感じていたり、周囲の困惑にも気づいていない場合が多くあります。また、双極性障害では、最初の病相(うつ状態あるいは躁状態)から、次の病相まで、5年ほどの間隔が空くこともあるため、うつや躁が治まっている期間は何の症状もなく、まったく健常な状態であるように見えます。しかしながら、この期間に薬を飲まないなど、治療がきちんとなされていないと、病相の間隔はだんだん短くなっていき、しまいには急速交代型(年間に4回以上のうつ、あるいは躁を繰り返す状態)へと移行し、薬も効きにくくなるともいわれています。
双極性障害の治療
双極性障害で繰り返される躁状態の期間とうつ状態の期間を比較すると、うつ状態の期間のほうが長いことが多く、また先述の通り、本人は躁状態の自覚がないため、受診のタイミングもうつ状態のときであることが多く、主治医にもうつの症状のみ伝えがちになる懸念が高いと考えられます。しかしながら、双極性障害が見逃されると、治療がうまく進まなかったり、抗うつ薬を飲むとかえって焦燥感などが強まって悪化する状態(アクティベーションシンドローム)が起きやすいため注意が必要です。
双極性障害には、気分安定薬と呼ばれる薬が有効です。基本的な治療は薬物療法ですが、規則正しい生活を送ることや、一定のスケジュールを守って生活することが、双極性障害の治療にはとても重要であると考えられています。また、生活リズムの調整と把握に加え、病気について知ることや、躁の前駆症状を把握するなどのセルフモニタリングを行うことが、症状の悪化を防ぎ、再発予防に効果的と考えられています。