代表の稲田礼子です。
本コラムは、私が日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
今回は麻疹(はしか)についてです。
麻疹の感染状況
日本において麻疹の感染者が報告され始めています。日本全国では2023年に入ってから6月21日までの時点で18人の感染者が報告されています。※1
18人と聞くと少ないように感じるかもしれませんが2020年からの3年間での合計の感染者報告は22人でした。
新型コロナウイルス感染症が流行していたこともあり、人の往来が少なかった期間でもあるため感染者が抑えられていたと考えられます。
今後、新型コロナで規制されていた人の往来が戻ってくることを考えるとより一層の注意が必要です。
感染力と感染対策
麻疹は空気感染するという点から、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスよりも感染がひろがりやすい特徴があります。手洗いやマスクなどで予防することができず、唯一の予防方法はワクチン接種です。多くの人が小学生低学年までに2回、ワクチンを接種しているため免疫を持っているとされています。
しかし年代によっては(1965年~1990年生まれ)1回しかワクチンを接種していない、2回ワクチンを接種しているが免疫が弱まっている人がいるといわれています。
そのような場合は追加でワクチンを接種することで、十分な免疫を作ることができます。
たとえ免疫が十分あったとしても追加接種は可能とされているので、過去に麻疹感染をした覚えがなく、ワクチンを2回接種していない人はワクチンを接種して感染を予防しましょう。
麻疹の症状
麻疹は潜伏期間が長く、10~12日ほどあるといわれています。最初は鼻水や咳、発熱などの風邪に似た症状が出ます。
そしていったん熱が引いた後に再び発熱し、特有の赤い発疹が全身に出てきます。この時の発熱は1週間ほど続き、つらいため入院することも少なくありません。
麻疹の症状そのものも大変ですが脳炎や肺炎などの合併症や、感染後しばらくは免疫力が低下するため他の感染症にかかりやすくなるなどの影響があります。
感染に対して特に注意が必要な人
妊娠されている女性は特に気を付ける必要があります。
妊娠している女性が感染し、高熱状態が続くと母体の負担と赤ちゃんの週数を考えて医師が早産にした方がいいと判断する場合があります。
したがって妊娠を考えている女性、配偶者や妊娠している女性の近くにいる人はワクチン接種をぜひ検討してください。ただし、すでに妊娠されている方は接種対象とはなりません。また、ワクチン接種後2週間は避妊が必要となります。
海外での感染状況
麻疹は日本だけでなく、世界的に多くの感染者が報告されています。特にインドでは2023年になってから7,3000人以上の感染者が報告されており、今なお増え続けています。※2
まずは、海外渡航前にワクチン接種を検討してください。麻疹の感染者が多く報告されている東南アジア、アフリカ諸国から帰国された際は2週間ほど、風邪のような症状がないか、赤い発疹がないかに注意しましょう。
もし麻疹が疑われる症状があれば、医療機関に行くのではなくまず電話で麻疹の可能性を考えていることを伝えましょう。
医療機関での受診が必要になった場合はできるだけ公共交通機関は利用せず、自家用車など他者と接することの少ない手段を選びましょう。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
参考: