本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
労働安全衛生総合研究所では、長時間労働の健康影響は大きく2つに分けて説明されています。
・脳・心臓疾患の危険性を高める
ある研究では、過去1か月の週労働時間が61時間以上(月時間外換算80時間以上)では、週労働時間40時間以下(月時間外換算0時間)と比較すると心筋梗塞リスクが1.9倍になり、過去1年間の勤務日の睡眠時間が一日5時間以下では、ー日6~8時間に比べて心筋梗塞が2.5倍になるという結果となりました。
・精神障害・自殺の危険性を高める
2011年に公表された精神障害の労災認定基準では、長時間労働は精神障害の重要な要因の一つとして位置づけられています。
長時間労働と睡眠の関係
慢性的な睡眠不足は長期的な作業効率の低下を招くと考えられています。米国にて行われた実験では、参加者は3、5、7、9時間のいずれかの睡眠をとる群に分けられ、7日間にわたり起きている間はランプがついたらボタンをできるだけ早く推す検査を行いました。
その結果、睡眠9時間の群では誤りはほぼなく、3時間の群では誤りが大幅に増えました。そして睡眠5時時間、7時間の群では、反応の誤りは毎日少しずつ増えるという結果になりました。また7日間の後、どの群も睡眠を8時間取る回復日を3日設けましたが、3日経っても睡眠3~7時間の群は作業効率が回復しないという結果となりました。
長時間労働者は、重篤な健康問題が発生する前に、かなり頻繁に昼間の眠気や疲労を経験していることが分かっています(労働安全衛生総合研究所 2007 年働き方と健康に関するアンケート調査)。
自覚的な眠気や疲労を放置すると、重大な健康障害や事故・ケガを引き起こすことにも繋がる恐れがあるため、眠気や疲労を感じたら、睡眠時間や休憩などを確保し、働き方を見直すようにしましょう。(参照:長時間労働者の健康ガイド)
参考文献
独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 「長時間労働者の健康ガイド」
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。