本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
ストレスチェックは、
①労働者自身のストレスへの気付きを促進すること、
②ストレスの原因となる職場環境の改善につなげること の2点を目的としています。
ストレスチェックに回答すると個人結果表が返却されますが、「ストレスがあるのだな」と結果をみた後、なにか対処をしたり、気をつけたりしていることはあるでしょうか。
今回はストレスチェックの活用の第2弾として、「ストレスコーピング(ストレス対処)」をご紹介します。
ストレスコーピングとは
ストレスをコントロールするために意図的に対処する方法をストレスコーピングと言います。
様々な分類がありますが、今回はストレスコーピングを2つに分けて説明していきます。
・問題焦点型コーピング
ストレスの要因自体に対処し、解決する方法。
業務量の負担を軽減するために、業務の棚卸を行う、上司や同僚にアドバイスを求めるなどの積極的な行動としての対処と、苦手な人と距離を置くなど問題を回避する対処法も含まれます。
・情動焦点型コーピング
ストレス反応を軽減することで、ストレスを緩和する方法。
困難に対して「ピンチはチャンスだ」と考えるといった見方を変える対処、好きなことや運動などで気晴らしをするといった対処が例に挙がります。
対処はレパートリーが大切
ストレスコーピングは1つの方法に頼るのではなく、上記の2つをバランス良く取り入れていくことが大切です。
1人ですること、他の人に頼ること、積極的に解決すること、距離を置くことといった細かい種類についても、バランスよく取り入れられるのが理想です。
また、信頼できる人に相談すると、聞いてもらえた安心感を得られるだけでなく、1人で考えていた時とは違った物事の見方や捉え方ができたり、自分では思いつかない解決法が発見できたりします。
このような、意識して使える対処法のすべてを「コーピングレパートリー」と呼ぶことがあり、レパートリーが豊富で、状況に合わせて柔軟に選択できるほどストレス反応を予防できるとされています。
ストレスコーピングは日々意識して実施することが効果的です。
日常的に取り入れていると、コーピングができなくなることが不調に気づくきっかけになることもあります。
ストレスチェックを通して自身のストレス要因を振り返り、毎日簡単にできることからコーピングを取り入れてみてください。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
参考:
- 秋山 一文・斉藤 淳 (2006). ストレスと精神障害 Dokkyo journal of medical sciences, 33(3), 207-212.
- 伊藤 絵美 (2008). ストレスコーピング 看護診断, 13(2), 57-58.