本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
ストレスチェックの主目的として、「職場環境の改善」があります。
健康診断などは不調者を早期に発見するための二次予防として行われていますが、ストレスチェックは一次予防(健康増進・疾病予防)が目的の制度です。
職場ストレスによる不調を予防するための環境改善がストレスチェック活用の中核であり、その検討材料となるのが「集団分析」の結果です。
一方、集団分析を行っていても分析結果がぴんとこない、どう活用して良いかわからないとのお悩みも多いところです。
今回はストレスチェックの活用の第3弾として、実際に職場改善に活用するための「集団分析の切り口」についてご紹介します
集団分析の切り口
個人の回答結果を集団ごとに集計し、部署や職位などの属性ごとのストレス負荷を比べられるのが集団分析の特徴です。
切り口としては、年齢、性別、部署、職位、勤続年数や残業時間など多岐にわたります。
人事労務のデータ上の区分をベースに考えることが多くなりますが、実態と合っていない場合にはぴんとこない結果になることが多くあります。
例えば、部署の中にも外回りの営業職と内勤の事務職がいるという状況であれば、同じ部署にいても業務は全く質の違うものが想定されます。
この部署で「身体的負担が高い」と結果が出た際、営業の移動がストレス要因なのか、事務職のVDT作業による肩こりなどが結果に表れているのか、「分析結果をみても何とも言えない」という状況になってしまいます。
上記の例では、「営業」「事務」といった業務別に区分するといった工夫が有効です。
さらに、部署の中で業務別に分けて分析するのか、職場全体で業務別に分けて分析するのかでも結果が異なります。
どのような切り口で分析するかは、ストレスチェック実施前に衛生委員会等で検討されますが、検討の際には、実態に合った集団単位を設定することが必要です。
一度決めた分析方法でも、PDCAサイクル回して、より役立つ結果となるよう、分析の切り口や分析単位、実施方法、実施時期等は適宜見直しを行いましょう。
切り口を決めるには
集団分析は年齢、性別、部署など定型的な分析でも、現状を可視化できる有用性がありますが、実施前に「仮説」を検討しておくと非常に役に立ちます。
最初は「○○部は雰囲気が良い」「××の人はしんどそう」といった主観的なものでも構いません。過去のストレスチェックや不調者数などのデータから推察されることがあれば、どのような結果になるかの仮説を立てて実施しましょう。
実際にその通りの結果が出れば、分析の結果から「何がストレスを緩和/増加させているのか」がわかり、良い取り組みは社内に広げ、リスクの高い要因は環境改善のポイントとなります。
想定と違う結果となる場合、みんなが想像と現場に相違があるのかもしれません。ストレスの高い結果となった集団については、まずは実態のヒアリングが必要となるでしょう。
集団分析の活用には、まず分析の切り口を適切に定めることが肝心です。
ストレスチェックの活用にお困りの事業場は、分析の切り口を見直してみてください。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
参考:
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