本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
ストレスチェック制度では、集団ごとの集計・分析及びその結果に基づく対応は、規則に基づく事業者の努力義務とされています。
集団分析等を通して職場のストレス要因がわかったとして、どのように対応すればよいのでしょうか。
今回はストレスチェックの活用の第4弾として、「職場環境改善」についてご紹介します。
ストレスチェック結果と改善のポイント
ストレスチェックにおける職場環境改善は、PDCAサイクルのDoの部分にあたります。
分析結果を受けて改善案を検討することも大切ですが、ストレスチェック実施前のPlanの時点で、どのように職場環境改善に活かすかを想定しておくことも必要です。
分析の切り口については、第3弾の記事も参考にしてください。
職場環境改善の具体的な計画例として、厚生労働省の「これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~」では、「職場環境改善のためのヒント集」のアクションチェックリストから、以下のような改善法が紹介されています。
また、レーダーチャートの「職場環境によるストレス」「身体愁訴」が高い場合には、職場の物理的環境(騒音・温度等)、作業場所や姿勢など、職場の作業環境の見直しが必要なサインです。
集団分析で特にストレスが高いとされた部署などがあれば、作業環境や作業内容の確認を行いましょう。
他にも弊社では、研修等による健康リテラシーの醸成や、コミュニケーションやサポートの促進として、朝礼等でお互いの健康を気遣う機会(健康KYなど)を増やすといった取り組みもご紹介しています。
このような改善案を実際に実行していく段階になると、協力が得られないとハードルを感じたり、理想通りの改善が見込めないということもあります。
「悪い部分を改善する」と見なすのではなく、社内の良い取り組みを他部署に広げるなど、「良い部分をのばしていく」という姿勢が、周囲を巻き込んで職場環境改善を進めるコツです。
職場環境改善の効果
具体的に何を実施するか(Do)も大切ですが、改善策をうった後にはその評価(Check)や改善(Action)も必要です。
法令遵守のためストレスチェックをやっているが、いまいち何に役立つのかわからないという場合には、評価(Check)の指標を決めると、環境改善の方針が共有しやすくなります。
評価方法の参考として、職場環境改善の効果についてご紹介します。
ストレスチェックを活用した職場環境改善の効果として、個人や職場のストレスの軽減、不調者の減少だけでなく、生産性の向上にも効果が期待できます。
吉村ら(2013)の費用便益分析の研究結果では、職場環境改善の実施にかかる費用が1人7,660円に対し、実施の結果として生産性が向上して得られる利益が1人あたり15,200-22,800円と、2倍以上の費用便益が見積もられています。
また、個人向けのストレスマネジメント研修では、1人あたりの費用が9,708円、生産性向上による利益が15,200-22,920円と見積もられていますので、ストレスチェック結果を受けて研修を実施することも生産性向上の効果のあるアプローチの1つです。
ストレスチェックの実施には費用がかかりますが、活用次第で費用以上の生産性向上が期待できます。
活用にお困りの事業場、ご担当者様がいらっしゃれば、ご相談だけでもお気軽に弊社へお問い合わせください。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
参考:
- 厚生労働省 これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~
- 吉村 健佑・川上 憲人・堤 明純・井上 彰臣・竹内 文乃・福田 敬 (2013). 日本における職場でのメンタルヘルスの第一次予防対策に関する費用便益分析 産業衛生学雑誌, 55(1),11-24.