本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
今回はヒートショックについてご紹介します。
ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所への移動や、気温の低い屋外から暖かい屋内への移動などによる急激な温度変化で血圧が大きく変動することによって起こる健康被害のことを指します。
これが誘因となり、失神などの意識障害、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞などを起こすことがあり、特に毎年11月から4月の冬季を中心に多く発生しています。
特に入浴時が注意
室温が低い脱衣場で衣服を脱ぎ浴室に入ると、急速に体表面から体温が奪われて血管が収縮するため血圧が上がります。次に、温かい湯船に浸かると血管が拡張して血圧が急激に下がるのです。
このように血圧が大きく上下するため、入浴中に意識を失い、そのまま浴槽内で溺れて亡くなるという不慮の事故が高齢者だけではなく高血圧や生活習慣病の持病がある方に多いのが特徴ですが、熱いお風呂に入ったりなど温度差が大きいと年齢にかかわらず誰にでも起こる危険性があります。
ヒートショックを防ぐポイント
・脱衣所、浴室、トイレを暖め、急激な冷えを感じないような環境にする
・入浴の際は、かけ湯で手足を温めてから湯船へ
・湯温はぬるめの41度以下、お湯につかる時間は10分以内を目安にする
・浴槽から出る際は、急に立ち上がらずにゆっくりと
・入浴前のアルコール、食後すぐの入浴は避ける
・お風呂に入る前には同居者にひと声かけ、また同居者はいつもより入浴時間が長いときには入浴者に声かけをする
入浴中の事故は、持病や前兆がない場合でも起こるおそれがあります。「自分は元気だから大丈夫」と過信せず、「自分にも起きるかもしれない」という予防意識をもちましょう。
参考:
1 交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意! 内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン あしたの暮らしをわかりやすく
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。