脳のさまざまな刺激を伝え合う神経のネットワークにトラブルが生じる、脳の機能障害による病気で、脳内の統合(まとめる力)が失調している状態が統合失調症です。このため、感情や思考をまとめることができなくなり、幻覚や妄想などの症状が起こります。発症の原因は正確にはわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。統合失調症の有病率は人口の約1%、つまり100人に1人の割合のため、決して珍しい病気ではありません。
症状
陽性症状
統合失調症の主な陽性症状に、幻覚と妄想があります。幻覚とは、実際にはないものが感覚として感じられることです。とてもはっきりと聞こえたり(幻聴)見えたり(幻視)するため、脳の中だけで起きているとは考えにくいものです。幻覚の中でも最も多い症状は、以下のような幻聴です。
【例】
「お前は馬鹿だ」:批判・批評する内容
「あっちへ行け」:命令する内容
「今トイレに入りました」:監視しているような内容 etc.
一方、妄想とは、明らかに間違った内容であるにもかかわらず、訂正不能な考えのことです。
【例】
街ですれ違う人に紛れている敵が自分を襲おうとしている
近所の人の咳払いは自分への警告だ
道路を歩くと皆がチラチラと自分を見る
警察が自分を尾行している etc.
陰性症状
意欲の低下、感情表現の低下、思考・会話内容の貧困を認めるようになります。また、認知機能が低下し、記憶する、何かに集中する、計画を立てる、判断する、などの能力が十分にできなくなることによって、生活・社会活動全般に支障をきたします。
治療について
統合失調症の治療は、まず薬物療法で幻覚や妄想などの症状を抑え、心理社会療法※1で社会生活機能の低下を防ぐことが重要で、どちらも組み合わせて行われます。統合失調症は再発しやすい病気であり、初発の精神病症状が軽快しても、服薬を中止した場合、1年以内に約70~80%、2年以内に98%の方が再発することが知られています。回復後は、再発しないよう維持することを目標にします。※2治療効果として、1年後の再発率は薬物療法のみの場合30%、薬物療法とリハビリテーションを組み合わせると8%まで再発を抑えることができるといわれています。しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬を減らしたり中止することは、再発を誘発し重症化の危険を高めるため、必ず専門医に相談しましょう。
※1心理社会療法…精神療法、心理教育、リハビリテーション(生活技能訓練SST、作業療法OT)
※2 Christopher S. Amenson, 精神分裂病のカリキュラム. 星和書店, 1999
Lehman, A.F., Thompson, J.W., Dixon, L.B. & Scott, J.E. (1995). Schizophrenia: Treatment outcomes research. Schizophrenia Bulletin, 21, 561-676.